iyasakaの子育て

心と頭と体に良質の栄養を! 

戦争と平和について考える絵本・児童書

平和に感謝しよう

広い世界を見回せば、戦争や紛争は今の時代にもあります。過去を振り返れば、日本にも暗く苦しく厳しい時代がありました。貧困だって外国だけでなく現代の日本にも身近なところにあります。

今年、平和にお正月が迎えられたことに感謝したいと思います。生きている限り、不満や不安やイライラや悩みや苦しみや悲しみなどネガティブな感情も経験するけれど、平和な時を過ごせていることに感謝して、できるだけ前向きに生きられるようにがんばりたいと思います。

そして、遠い世界にも身近なところにも苦しみや悲しみを抱えた人がいることを忘れずにいたいです。無理のない範囲で…、たとえ小さなことでもいいから他人のために善行を積むことができる人でいたいなと思います。我が子にも、周りの人のために貢献できる人間になってほしいと願っています。そのための教育です。また、地域のために、まわりの人々のために損得勘定抜きで活躍してくださる方に対して素直に感謝したいと思います。

 

子どもが小学生の頃、おはなし会(読み聞かせ会)というものがあったので、私もおはなし会ボランティアに参加してたくさんのおはなし会を担当させてもらいました。2~3人のお母さんボランティアが1組になって45分のおはなし会を行いました。絵本の読み聞かせや手遊びやブックトークやパネルシアターなどをするのです。事前にプログラムを考えるときクラス担任の先生にリクエストをお聞きしていたのですが、3~4年生のクラスで多かったご要望が「戦争や平和に関するおはなし」です。

戦争や平和に関する絵本の読み聞かせをする、児童書の短編を朗読する、ブックトークで児童書を紹介するなど、いろんなアプローチがあります。涙なしには鑑賞できないうような悲しいお話、前向きに平和を考えていこうとする話、胸に残る深い話など、様々な作品があります。みなさんのご参考になれば幸いです。

 

f:id:iyasaka_appare:20200105125458j:plain

かわいそうなぞう

第二次大戦中、空襲で上野動物園のゾウが逃げ出して町で暴れたりしないように、ゾウを殺さなければならないことになりました。注射もできず、餌に毒を混ぜることもできず…。餌をやらずに餓死させるしか方法はありません。飼育員さんたちの悲しみ、餌をねだって芸をする健気なゾウ…。悲しいお話が涙を誘います。小学生向けの絵本。読み聞かせ8分程度。

 

チロヌップのきつね

北の海に浮かぶチロヌップという小さな島。きつねの家族が自然の中で暮らしています。じいさんとばあさんは春になると海の恵みの魚や昆布をとりにこの島へやってきます。人間もきつねたちもこの島の自然の恩恵を受けて静かに暮らしていたのですが…。戦争に、そして兵隊たちに奪われるきつねの命。小学生向けの絵本。静かなお話です。読み聞かせは10程度。

 

ぼくがラーメンたべてるとき

ぼくがのんびりとラーメンを食べているときに、近所では…、遠い国では…。広い世界を見渡せば戦争、紛争、貧困などがあるんだということに気づかせてくれます。涙を誘うおはなしではありませんが、深いです。こどもが戦争や平和について考えるきっかけになるかもしれません。小学生向けの短い絵本。

 

戦争を平和に変える法

戦争や紛争、そして和平とはどういうことか、子どもの喧嘩を例に挙げてわかりやすく説明してくれる本です。子どもが浜辺で砂遊びをしているときに、ほかの子どもと領土争いをするのです。かなしい話ではなく、コミカルなお話です。どのように争いが勃発するのか、どんな攻撃をしかけるのか、協定をむすんだり、仲介役が出てきたり…。紛争や和平に関する言葉を理解するのによい本です。大人がニュースや新聞で見聞きするような語彙です。小学高学年向けの絵本。読み聞かせ8~10分程度。

 

そらいろ男爵

戦争を扱っていますが、暗く悲しい話ではなく前向きで勇気がもらえるようなお話です。そらいろ男爵は敵地を攻撃するときに飛行機から爆弾ではなくあるものを投下させました。その力は強大です。敵の戦略を狂わせます。

暴力や武力ではなく言論の力で戦争を終わらせるお話なのです。ストーリー自体は単純なので小学生の全学年で読み聞かせることはできますが、深い意味が分かるのは小学高学年以上だと思います。読み聞かせ8分程度。

ちいちゃんのかげおくり

家族4人の影送りを空に見た翌日、体が丈夫でないお父さんは出征してしまいました。残されたお母さんとおにいちゃんとちいちゃん。 空襲で逃げるとき、ちいちゃんはお母さんやおにいちゃんとはぐれて一人ぼっちになってしまいます。待っていても探しに来てくれないお母さんとお兄ちゃん…。やがてちいちゃんの体は軽くなり、あの空へ…。

あまんきみこさんの悲しいお話です。泣かずに読み聞かせすることは難しいと思います。国語の教科書にも採用されたことのある名作です。

  

『車のいろは空のいろ 白いぼうし』より「すずかけ通り3丁目」

絵本ではなく児童書です。様々なお客さんを載せて不思議な体験をする松井さんの空色のタクシーのシリーズは小学校の国語教科書にも採用されたことがあると思います。

この短編集の中の戦争のおはなし。心優しいタクシードライバーの松井さんは一人の女のお客さんを載せました。お客さんに案内されるまま、町はずれの道へとタクシーを走らせます。女の人は若かったころのこと、ちいさな子どもを育てていたはなし、そして戦争で我が子を失った話をしてくれるのです。

4年生のクラスのおはなし会で朗読しました。子どもたちも真剣に聞いてくれましたが、クラス担任の先生が号泣してしまいました。おとな、特に子をもつ親にとっては泣けるお話です。おはなし会で読み聞かせをする前に、涙を止める練習をしていどみました。

 

ビルマの竪琴

児童書です。児童書でありながら子どもは出てきませんし、おとなの鑑賞に堪える作品です。ビルマ(現在のミャンマー)に出征した部隊のおはなしで、戦争の話でありながら希望も明るさも勇気もあります。青いインコ、赤いルビー、黄色の僧衣、そして白い骨…。挿絵がほとんどないのですが、文章から絵や色彩が迫ってくるようです。行方不明になった水島上等兵はどこへ?竪琴をかき鳴らす僧侶とは?降伏せずに命を落とすまで戦うのがお国のためになるのか、降伏して命を永らえ生きて働くことが人間の道なのか…?名シーンがたくさんあります。小学高学年向けの児童書。

 

二十四の瞳

男たちは出征し、瀬戸内の小さな島に残されたおんなこどもは…?新米のおなご先生と、瞳を輝かせる教え子たちは一生懸命に生き抜こうとします。貧富の差、教養のなさ、それぞれの家庭事情、村社会、奪われる言論の自由…。少年志願兵が英雄扱いされる時代、親や教師の気持ちは…。女性の目線で描かれた戦争の物語。小学高学年向けの児童書。

 

 

少年H

神戸を舞台に妹尾河童さんが経験したリアルな戦争時代。小学生から中学生の頃の多感な少年の視点で描いた名作。神戸での生活、日に日に戦争色が濃くなっていく時代、苦しさや悲しみの中にあっても逞しくしなやかに生きていこうとする庶民の力強さ。涙を誘うために作られた感動モノの物語ではありません。戦争の中で困難なことが次々とあっても人々には暮らしがあり、時にしたたかさやユーモアがあり、子どもの成長や明るい希望があるのです。

全ての漢字によみがながふってありますが、小学生~大人までみんなが鑑賞しておきたい作品です。

 
神戸で生まれ育ったふうちゃんは6年生の女の子。沖縄出身の両親は神戸の下町で琉球料理店を営み、優しく人情味あふれる常連さんたちもいて幸せに生活しているのですが…。お父さんの心の病が、お父さんを苦しめます。ふうちゃんがまだ知らされていない悲しい出来事とは何なのでしょうか?沖縄が背負った苦しみとは一体?お父さんの悲しみの理由に沖縄や過去の戦争が関係しているということがわかってきます。多感な少女が悲しい過去を知り大人になっていこうとするお話。灰谷健次郎さんの素晴らしい作品の中でも特に名作だと思います。小学高学年以上向け。