10代におすすめの物語
児童文学から小説への移行期にぜひ読んでもらいたい名作です。大人の鑑賞にも堪える素晴らしい作品ですが、小学5年生くらいの子どもから楽しめると思います。
中学受験を考えているなら、小学4・5年生のうちにぜひ読んでおきたいものです。中学受験用の国語問題集や模擬試験にも採用されることの多い作家の代表作を読んでおくと、物語の読解練習をするうえでポイントがとらえやすくなると思います。
少女や少年の成長の様子、環境や出来事をきっかけに心が変化していく様子などを読み取る力が必要です。代表作を読んでそれぞれの作家さんの表現の特徴に慣れておくといいと思います。自分の感情とは別に、客観的に物語の中の道場人物の心をとらえていくことも必要です。
中学受験をしない人は、ただただ純粋に作品を楽しんで、どっぷり物語の世界の中に入り込んでください。感情移入したっていいんです。
親子別々に読んでもいいし、親が子どもに読み聞かせてもいいと思います。一人で読む楽しみもあるし、親子で読書タイムを共有する楽しみもあるし…。
とんび
重松清さんの作品の中でうちの子の一番のお気に入りです。かつてドラマ化されたこともあります。
瀬戸内の田舎町で暮らす父子家庭のお話で、父と息子と地域の人々との交流やぶつかり合いの様子が描かれています。おさなごを残して事故死する母親、父親としての苦悩と自覚、息子の自我の芽生えと成長、大人になった息子と老いて行く父親との世代間ギャップなど、20年以上にわたる父子の関わりと時代が描かれています。
重松清さんの作品は、文章が読みやすく心の中で映像化しやすいという特徴があります。読んでいて決して退屈させないし、人の心の弱さも泥臭さも温かさストレートに表現されていて、子どもにも理解しやすいです。また大人が読んでも感動してしまいます。
重松清さんは作品も多く、直木賞や山本周五郎賞なども受賞しています。
バッテリー
あさのあつこさんの作品の中で、うちの子も私も一番のお気に入りです。
天才的な能力を持ち、なおかつ努力家で妥協を許さない尖ったピッチャーと、おおらかで人懐こくチームメイトを大切にするキャッチャー。二人の野球少年と友人たち、ライバル、家族、監督…それぞれの期待、不安、葛藤、悩みなどを巧みに描いています。私も我が子も野球に対して全く興味も知識もないのですが楽しめました。物語の中に引きこまれて読みだしたら止まらなくなります。あさのあつこさんの作品の中に出てくる人物がみんな魅力的だからだと思います。人の心のひだをこれほど繊細に描くことができるなんてすばらしいです。
「バッテリー」シリーズは、野間児童文学賞、日本児童文学者協会賞、小学館児童出版文化賞を受賞。
西の魔女が死んだ
不登校になってしまった少女が母親のもとをはなれ、しばらく西の魔女のもとで暮らすことになりました。西の魔女とは少女の大好きなおばあちゃん。遠い昔、日本にわたってきて日本人と結婚したおばあちゃんが、人生の中で大切にすべきこと、日々の暮らしを丁寧に生きること、心の持ちようなどを教えてくれます。多感な中学生が魔女のもとで自分磨きともいえる魔女修行を始めます。
田舎の美しい草花や穏やかな生活が目に浮かぶようなやさしい作品です。
梨木香歩さんの代表作。
夏の庭
独りわびしい生活の中で生きる希望を失っているおじいさんと、小学校最後の夏休みに様々な体験をする近所の子どもたち。おじいさんと子どもたちは、初めのうちはお互いに嫌い合っていましたが、やがて心を開き親しくなってゆくのです。
湯本香樹実さんの名作。10か国以上で刊行され、日本児童文学者協会新人賞、自動文芸新人賞、米国バチェルダー賞、ボストン・クローブ=ホーン・ブック賞などを受賞。
小学校高学年~大人向けの小説。
カラフル
前世で何か罪を犯したらしい僕の魂は、天使のお告げでほかの人の体を借りて再挑戦のチャンスを得るのだが…。僕はどんな罪を犯したのか覚えていないが、自殺を図った真という少年の体を借りて生きなおし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真という不器用な少年と、彼をとりまく家族やクラスメートに困惑する僕。真はどうして自殺をはかったのか、真にとって家族とはどんな存在だったのか、そして僕の犯した罪とは一体?
淡い恋心、自我、孤独感、母への嫌悪感、父への不信感、持て余す性欲など、思春期男子の複雑な心のひだが見事に描かれています。
真になりきって生きる僕の魂は、真が気づいていなかった人々のありのままの姿を知ることになります。人のこころの美しさも醜さも…。すべてを知ったとき僕の魂は…。
森絵都さんの不朽の名作。
思春期の性などの話もあるので中学生以上向きの小説。早熟な子なら小学生高学年でも。