深まりゆく秋を子どもと一緒に
我が子は6歳まで関西で過ごし、小学校6年間を常夏の東南アジアで過ごしました。日本人小学校に通っていましたから、文科省指定のカリキュラムに沿った授業を受けていました。国語でも理科でも社会でも日本の季節の移り変わりに関係するような学習内容があります。常夏の国にいながら、日本の秋の物語を読んだり、秋の植物や収穫や天気について学んだりしていたわけです。
うちの子は未就学のころに日本で秋の行事に参加したり、秋の旬の食べ物を味わったり、秋晴れの日にたくさん遊んだりしていたので、常夏の国にいても秋の情緒や景色を思い出すことができました。クラスには常夏の国で生まれ育った友達もいたのですが、彼らにとっては季節の移ろい、深まりゆく秋…などはうまくイメージできないようでした。(もちろん、その代わりに彼らは東南アジアで、日本にはない素敵な経験をたくさんしているんですけれどね…)
大人もそうですが、子どもは五感を研ぎ澄まして体験することで多くのことを学びます。秋の澄んだ空、秋祭りの囃子、秋の果物や野菜の収穫、ドングリや落ち葉、赤とんぼ、彼岸花、栗ご飯やサンマの塩焼き…秋に見聞きしたもの、味わったもの、触ったもの、感じたもの…それらは無意識のうちに記憶の中に刻まれます。そして豊かな体験が子どもの心と頭と体を育みます。身近に秋を感じることのできる物事があれば、とてもありがたいことです。無理なくできる範囲でお子さんと秋を体感してください。落ち葉を踏みしめるとか、ドングリで遊ぶとか、赤とんぼや夕暮れの影を眺めるとか…小さなことでもいいのです。
日常生活の中で自然や季節を体感することはとても大切ですが、その体験を親子で振り返って言葉を交わすことも重要です。「秋になって夕暮れが早くなったね、影が長くなったね…」とか「新米がおいしい季節だね」とか「京都のもみじは見頃だって」とか…。体験を言語化する習慣をつけておくと頭や心の中が整理されます。秋の歌を一緒に歌ってもいいです。そして、秋の絵本を親子で一緒にたくさん読むことができたら最高です。体験をアカデミックな学びへと導くことができるような気がします。小中学校…つまり義務教育の間に習う事柄の多くは、人の生活の中で見聞きするようなこと、つまり常識的なことが多いのです。良い経験と読み聞かせや読書をしていれば、塾なしでも落ちこぼれたりしないと思います。
秋の絵本
たくさんお子さんに読み聞かせてあげてください。秋の思い出をたくさん作ってあげましょう。心と頭と体に愛情をたっぷりと注いでゆっくり育ててあげたいものです。
どんぐり
秋になると動物たちは、どんぐりを拾って食べたり、運んで巣穴に蓄えたり、土の中に埋めたり…。動物の営みや植物の発芽と成長を知ることができる良書です。理科の学びを深めてくれます。
4歳~小学生向き。ひらがな表記。
木の実とともだち
秋になる実、赤い実や青い実、食べられる実や毒のある実などを知ることができます。また、木の実を使ったスイーツの作り方やどんぐりの遊びなども教えてくれる楽しい絵本です。
小学生向き。
さつまのおいも
薩摩弁をしゃべるサツマイモの家族。村上康成さんの可愛らしい絵と中川ひろたかさんのテンポの良いお話。幼児向けのたのしい物語です。
14ひきのひっこし
人気の14ひきシリーズ。野ネズミの大家族は森の奥を目指して引越します。山道を登ったり、川を渡ったりしながら新しい住み家を探します。14ひきは協力しあって新しい家を建てて、秋の恵みを蓄えて冬に備えます。
幼児~小学低学年向け。
ばばばあちゃんのやきいもたいかい
さとうきわこさんの人気シリーズ!遊び心を持ったばばばあちゃんがまた楽しませてくれます。この物語を読めば落ち葉焚きや焼き芋づくりがしたくなります。
幼児~小学低学年向け。
おおきな おおきな おいも
絵本から児童書への橋渡しとなる幼年童話の傑作。どのページにも絵がありますが、絵本の中の丁寧でカラフルな絵とは違って、描写の荒い2色刷りの挿絵で子どもの自由な想像力をかき立ててくれます。
ひらがな表記です。短く単純な話し言葉で物語が進んでいきます。読み聞かせも良いですが、一人読みにチャレンジし始めた子にもとても良い本です。
温かい気持ちになる素敵な物語です。
もりのかくれんぼう
林明子さんの絵が愛らしい絵本です。秋の森の中にいろんな生き物が隠れています。それを探す楽しみのある絵本です。
幼児向け。
ハロウィンの季節に読みたくなるかぼちゃの絵本。ねこがかぼちゃを切り分け、リスがお鍋をかき混ぜ、あひるが味付けをして世界一おいしいかぼちゃスープを作ります。ある日、それぞれの役割をかえようとするとたちまち混乱して大喧嘩…。
せなあいこさんの日本語訳のテンポが良くて、たのしく読める絵本です。
小学低学年向け。