「だいきらい!」
小さな子どもは純真無垢ですし、感情表現がストレートです。本音と建て前を使い分けるなんてことはあまり得意ではありません。もちろん小さい子どもだって場の空気を読む繊細な子や、人に気をつかう優しい子もいないわけではないのですが…。一般的には自分の好き嫌いや快・不快をはっきり言葉に出す子のほうが多いような気がします。
手間暇かけて作った料理でも「ピーマン嫌い」って言ったり、やんちゃな子を見て「乱暴な子はイヤ」って言ったり…。幼い子の自然な表現です。だから、子ども同士はしょっちゅう言い争います。ささいな喧嘩をします。当たり前のことです。でも、大人は子どもの喧嘩を見ると、やめさせようとしたり無理やり仲直りをさせようとしたり…。
大人が事情聴取して喧嘩を裁いたり、握手をさせて「ごめんなさい」と言わせたり…。
もったいないなと思います。よほど危険なことでもない限り、幼い子同士の喧嘩なんてさせておけばいいのに…。小さいうちの喧嘩は大問題に発展することなんてほとんどないと思います。今日大喧嘩しても二日後には仲直りしているなんてよくあることです。
子どもは喧嘩してぶつかり合って、コミュニケーション能力を磨いていくんだと思います。自分の中にある負の感情をどのように処理したらいいのか考えます。友達とうまくやっていく方法も身につけます。苦手な相手との距離の取り方、自分の守り方、主張の仕方、相手への遠慮や思いやり…そんなことを経験から学んでいくんだと思います。
友達に「嫌い」って言っちゃダメ…みたいな教育をすると大人が見ていないところで意地悪したりします。頭ごなしに「いじめはダメ」と教育すると陰湿ないじめをします。
幼い子ども同士の喧嘩なら、おとなは「やりすぎはダメよ。ほどほどにしておきなさい」と軽く注意をしたり、「おやつでもたべて気分転換する?」と言ったりすればいいと思います。
あるいは「そうか、乱暴されて嫌だったの?辛かったんだね。」と共感してあげたり、「相手にも言い分があるのかもね。」と相手の立場を考えるように促したりするのがいいと思います。
自分の子がよそのお子さんと喧嘩しているときに、相手の親御さんにはちょっと気をつかいますよね。そんなときには「けんか相手になってくれてありがとうね」とか「子どもは喧嘩したりいろいろあると思うけど、親同士は仲良くしようね」と言うことにしています。子ども同士の喧嘩のせいで親が気まずくなるなんて残念です。こどもの喧嘩に親が慌てすぎたり熱くなりすぎたりしない余裕を持ちたいものです。
幼いうちに友達とのコミュニケーションを十分にしてこなかった子は、小学校高学年になっても友達付き合いが下手だったり、陰湿ないじめをしたりする場合があります。また、自分をうまく表現できずにいじめられたりするかもしれません。友達の冗談を真に受けてやたら傷ついたりするかもしれません。そのくらいの年齢になると事態は複雑化しやすいので、場合によっては大人のさりげないサポートが必要だと思います。
時には親や先生が解決の糸口を一緒に探してやるのはいいことだと思います。しかし、実際に人間関係のトラブルを乗り越えて逞しく生きていくのは、あくまでも子ども自身だと思います。
親がサポートしてやれるのはせいぜい高校生くらいまででしょうしね。大学生や社会人になった我が子の人間関係の修復は親にはできません。愚痴や弱音を聞いてやることならできるかもしれませんが。
最近は「嫌い、ばか、死ね」などの相手を傷つける言葉を言ってはいけないと学校で先生から指導されていると思います。私も我が子にはそういう言葉を使ってほしくないと思っています。しかし、言葉というのは表面的な意味だけで判断してはいけないということも子どもに伝えています。きつい言葉を投げかけられても、過剰反応する必要なないのです。
たとえば、関西には「あほ」という言葉があります。この言葉を使う人の気持ちは実に多様です。相手を見下すような意味だけではないのです。ただの相槌だったり、照れ隠しだったり、愛情の裏返しだったり、驚きの表現だったり、八つ当たりだったり…。
また言葉が乱暴でも人情味のある人はたくさんいます。丁寧な言葉をつかっていても冷たい人や慇懃無礼な人もいます。言葉と心と態度というのは複雑なものです。
きみなんか だいきらいさ
ジェームズとぼくはいつも一緒で大の仲良し。でも今日はちがう。ジェームズとは絶交してやる!言葉と裏腹な心をモーリス・センダックさんの絵が見事に表現してくれています。「きらい、絶交」と言いながらも、考えるのはジェームズとのたのしい思い出ばかり…。ジェームズの態度には腹が立つけど、やっぱり一緒に遊びたいんですよね。
幼児~小学低学年向けの絵本。
はせがわくん きらいや
小学校の図書読み聞かせボランティアをしていた時に先輩ママから教えてもらった衝撃の絵本です。障害を持つ長谷川くんと過ごすぼくの戸惑いを描いた作品。長谷川君のお母さんの愛情いっぱいの気持ちはなんとなく理解できるんだけど、長谷川君と遊ぶことは難し過ぎて、苛立ったり苦しくなったり…。
絵本の始めから終わりまで何度も「はせがわくん、きらいや、だいきらいや」と感情をぶちまけているのです。小学校高学年以上の子向けの絵本です。どれだけの子が「ぼく」の言葉と気持ちを理解できるでしょうか?「きらいや」と言いつつ、長谷川君を放っておけないのはなぜなのでしょう?
答えはどこにも書いていないし、ハッピーエンドではない絵本ですが、胸に響くものがあります。とても難しい作品です。難しい作品だからこそ、ぜひ親子で読んでみてほしいと思います。多くの人に読んでもらいたい名作中の名作です。